幻の味 ~駅弁編

カウンセラーの鶴田です。

 みなさんは、お気にいりの駅弁、ありますか?

 以前サラリーマンをしていたころには、遠くへの出張が多かったので、朝移動前に出社してから昼前に新幹線に乗る、なんてことがよくありました。
 その流れで駅弁のお世話になる事も多かったのですが、ここ数年は高速バスでの移動ばかりだったため、すっかりご無沙汰でした。

 で、先日たまたま、お昼くらい発の新幹線に乗るために、久しぶりに駅弁を購入しました。

とりめし

この駅弁、広い仙台駅でも、あまり置いていない代物で、以前一個だけ見つけた際には、目の前でOLっぽいお姉さんに
先を越されてしまい、ずいぶん悔しい思いをしたものです。(そこまでか?)

 で、これ、今でこそ仙台駅で売っていますが、40年ほど前には、青森県のとある町の駅でしか売っていませんでした。

 (以下、遠い眼で回想)

 僕が高校の頃にすごしたその町は、青森の片田舎でしたが、一応、交通の要衝で、当時の国鉄の特急が停まる駅がありました。
 そして、それとは別に、ローカル線と私鉄2つの始発駅でもありました。

 乗り換えのある駅だからなのか、オリジナルの駅弁がありまして、それが件の「とりめし」でした。
 黄色を基調にしたシンプルな包装紙には、鶏のイラストと「とりめし」とだけ書いてあったと記憶しています。

 中学3年生の秋冬と、その駅の近くに住んでいたのですが、当時はコンビニもなく、
外食よりも手軽だったせいか、よく母に買ってくるよう頼まれ、弟たちと食べたものです。

 当時、地方への物流にはけっこう時間がかかったようで、中高生に大人気だった「週刊少年ジャンプ」が町の書店に並ぶのは、発売日の月曜より一日遅い火曜でした。
 ただ、駅の売店だけは、国鉄独自の流通に乗っているせいでしょうか、ちゃんと発売日の月曜に店頭に並びます。
 なので、月曜は授業が終わると、大急ぎで駅に向かい、少年ジャンプを買いました。
 駅の売店では、平積みの少年ジャンプと、とりめしの駅弁が並んでいました。
 きっと売り上げトップ2だったことでしょう。

 (回想おわり)

とりめし 駅弁

さて、その「とりめし」ですが、まあ、ひし形の弁当箱が特殊なだけで、中身はいたってシンプルです。
 鶏のそぼろ、玉子のそぼろ、鶏肉の照り焼きが、鶏のだしで炊いた茶飯の上に、乗っているだけです。
 あ、最近ついぞ見かけなくなったグリーンピースが乗っているのが珍しいっていえば珍しいですね。

「40年前の記憶とは包装紙のデザインが違うな」とか「当たり前だけど、仙台近郊で作っているんだな」とか「まあ、見た目はほぼ同じだな」とか、いろいろ思って食べました。

 久しぶりに食べた「とりめし」は、記憶しているよりも、だいぶ塩辛い味がしました。

 舌が変わったのか、記憶の中の味が美化されたのか、わかりませんが、あの頃食べた「とりめし」の味は、もう、記憶の中にしか、ないのかもしれません。

んでわ。