朝ドラ

こんにちは。カウンセラーの鶴田です。

ふだん、平日の朝はNHKのニュースを見ます。
もちろん世界情勢・・・ではなく、おもに今日の天気が気になるので、です。

で、ローカル局の天気予報のあとは、朝の連続テレビ小説、通称“朝ドラ”が待っています。

朝ドラはシーズンによって、見たり見なかったりとムラがあるのですが、
主人公の出身地や舞台(*1)が東北だと概ね視聴しています。

事前情報で、今期は宮城県が舞台と知ったため、見ることは決まっていましたが、
主人公が気象予報士、ということで、まさか宇宙行ったり(*2)はしないだろうな、などと余計な心配をしておりました。

そういうわけでまあ、ご当地ものだから、という軽い感じで見始めたのですが、
これが予想をいい意味で裏切る形となりました。

まず最初の頃に、祖父が牡蠣の養殖をしている島を離れて森林組合に就職する主人公、というあたりで、
これは「森は海の恋人(*3)」みたいな話なのかなー、と思ったり、
現地の木材を使って学童机や椅子を企画する話は実際に聞いたことあるなー、と思ったり、
と、細かい地元ネタが満載で、けっこう綿密な取材をしているな、と感心していました。

今回は、なにか不思議な雰囲気を醸し出す主人公なのですが、
本作の脚本家とは、すでに別の作品でも一緒(*4)だったので、
これはもしや当て書き(*5)をしているんじゃないかなー?、などと妄想したりもして、それもまた楽しかったです。

しかし、この作品の真骨頂は、朝ドラという枠で、初めて東日本大震災と向き合った、という点にあると思います。

震災自体は、2013年に「あまちゃん」(*6)で起きてはいますが、
主人公たちが積み重ねた日常を壊す出来事、として描かれたもので、
震災から二年後というあの時期に出来る、あれが精一杯だったのではないか、
と感じています。

その意味でも、震災から10年というタイミングで、ドラマの舞台が、
また三陸地方となったのは、偶然ではなく、最初からそう企画されていたのだな、
と、今更気づいた次第です。

震災でどんな風に人が傷ついたかを丁寧に描き、どう癒されていくかまでを
しっかり見せてくれる、そんな力作なのでした。

そして個人的には、心理学で知った様々なことが、作品内に散りばめられていることにとても驚きました。

震災のその時に、その場に居合わせなかったことに引け目を感じる人や(*7)、
妻が行方不明のまま立ち直れずに酒におぼれる人(*8)、
また、避難場所で教師という役割と母親という立場に心を割かれた人など、主要な登場人物のほとんど全員が、
震災で心に傷を負っていて、それぞれが、過去を乗り越え、また、癒されていく、そんな物語でした。

そういえば、いよいよ朝ドラ最終週でした。
この文章が載る頃には、もう最終回直前ですね。(*9)。
未見の方には、なにか申し訳ありません。
でもきっと年末年始くらいに総集編的なものをやると思うので、その時には是非ご視聴ください!!

んでわ。

★注釈というか蛇足:
*1:ちまたのウワサでは、朝ドラの舞台は、全国の都道府県各地を順番に使う、という謎ルールがあるらしい。

*2:朝ドラ「まんてん」(2002-2003):主人公(宮地真緒)は宇宙飛行士にあこがれ、気象予報士となり、
物語終盤でついに宇宙から気象予報をする。

*3:森は海の恋人:気仙沼で牡蠣などの養殖をしている方が、海の水質悪化をなんとかしようと
もう40年も前に植林プロジェクトを立ち上げた。

*4:「透明なゆりかご」(2018):NHK「ドラマ10」枠で放映。
主人公(清原果耶)が、産婦人科の見習い看護師経験を通じて、生まれる命の重さや大切さを知る話。
ちなみに、主人公の父(内野聖陽)と上司(西島秀俊)も、同じ脚本家でW主演だったため、
二人が出会うシーンでは話題騒然だった。

*5:当て書き:演劇や映画などで、その役を演じる俳優をあらかじめ決めておいてから脚本を書くこと。

*6:朝ドラ「あまちゃん」(2013):脚本の宮藤官九郎は宮城県北部出身。思うところが、きっとあったはず。

*7:サバイバーズギルト:
戦争や災害、事故、事件、虐待などに遭いながら、奇跡的に生還を遂げた人が、
周りの人々が亡くなったのに自分が助かったことに対して、しばしば感じる罪悪感のこと。

*8:あいまいな喪失:
喪失そのものが不確実で、失ったかどうかがはっきりしない喪失のこと。

*9:2021年10月28日現在執筆時、最終回は29日放送予定。