お薬や治療法に「?」がある時

こんにちは。カウンセラーの内藤です。

お母様を遠距離介護しているCさんのお話です
Cさんの母Mさんが脳血管系の疾患で緊急入院となったのは、コロナ禍中の昨年春先のこと。

幸い、無事退院され、夏の画像検査でも特に悪い変化はなく落ち着いているとの診断でホッとしたものの、ひとつだけ気掛かりなことがありました。

よく笑い、お茶目だったMさんがだんだん笑わなくなり、ぼうっと無表情になってきたことです。
「気のせいかも…。でも、退院直後の方がまだ笑顔があったような…。病気のせいで認知症が急に進行したのかな…。それともこれが自然で、もうどうしようもないこと?…」。

担当ケアマネと連絡をとると、ケアマネさんも気になっていたとのことで、自分だけの気のせいだけでもないかも、と思ったそうです。
改めて、検査結果やお薬手帳を見直すと、気になる部分がありました。
BPSD*の興奮を抑える薬が幾つもあり、退院時に脳外科から処方されたものを、掛かりつけ医に代わって以降も継続していることでした。

明るかったMさんの変化とそのお薬に、何等か関係があるのでは?と考えはしたものの、遠距離介護で毎日一緒にいる訳でない、専門家でもない素人がネットで調べただけで口出しをしてもいいのか、ためらいがありました。

けれども、CさんはMさんが入院した脳外病棟でのエピソードの中で気になることがあったのだそうです。看護師さんから、「頭を動かすと危険だから、急に起き上がらず安静にしてくださいと何度言っても、Mさんは起き上がろうとするんですよ。とめられるとすごい力で抵抗され、沈静の薬でようやくおとなしくなって…。もとから頑固で攻撃的なところ、ありましたか?」と尋ねられた時の驚きでした。

「普段の穏やかな母からは考えられません。起き上がろうとしたのは、家にいる父の事が心配だったからでは…。父は殆ど家事ができないので。私からちゃんと説明し母の不安を解消できていれば、そんな状態にならなかったかもしれない。コロナ禍の面会制限で中々会えず、手紙で伝えようと書いたのですが、あの時の母に読めたかどうか…。命は助かっても、あんな能面のような顔になって…。」と、やむを得ない状況の中できなかった事の悔いを口にされました。

ひとしきりお話を伺った後、退院後、新たなに掛かりつけ医になった先生とCさんとの関係性について尋ねてみました。
すると、「そういえば、先生は、不安なことや疑問があればいつでも何でも聞いてくださいと言ってくださったかと…」と言われ、「ダメもとでお薬の事、ご相談してみたいと思います」と帰っていかれました。

その後、掛かりつけ医に相談され、お薬についての質問をしたところ、先生も減薬を考えていたとのことで、その場で、一種類ずつ量を減らして様子をみて行きたいがどうか…と減薬スケジュールを提案してくださったそうです。

減薬(全く飲まない時も含め)の試行錯誤を経て、一剤だけ少量を飲むことで現在は落ち着いているとのこと。
Mさんらしい冗談や笑顔が戻り、先生からの「今後も様子を見ながら、その時々で必要な調整をしていきましょう」という言葉に安堵したCさんでした。

Cさんは、Mさんのお薬や治療経過について、ひとりでネット情報を検索している時に重い閉塞感を感じたそうです。
けれども、その不安を第三者にお話しになる中で、ご自身で問題解決への糸口に気付き、ケアマネや医師などの専門家に適切な形で相談することで、良い方向に向かわれたようでした。

医療者がご本人のそれまでの姿を知らない場合など、その人を良く知る人(ご本人や家族など)と医療者の情報共有が、治療や生活の改善に役立つことがあります。
また、相談した結果、そのお薬や治療法が妥当と納得でき、変わりなく続行ということもあるでしょう。それでも、抱えていた疑問が解消され、治療に専念できるのは良いことではと思われます。

いずれにしても、お薬や治療法について「?」がある時は、疑問や悩みをひとりで抱え込まず、主治医に質問や相談をしたり、医療機関の相談窓口などを活用しましょう。相談しても疑問が解消せず、悩ましいときには、セカンドオピニオンを求めることも選択肢となるでしょう。

*個人情報に配慮し、個人が特定されないよう加工し、ご本人の了承を得て掲載しています

*BPSD:認知症において、脳の障害に起因する中核症状(記憶障害や、時間や対人認知などの見当識障害など)に付随して発症する、心理や行動における二次的な周辺症状(うつ、意欲低下、興奮、妄想、暴言暴力、徘徊、食事や排せつに関する以前にはなかった問題行動等)のこと。

 

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