東田直樹著「自閉症の僕の七転び八起き」を読みました

カウンセラーの北野です。

私はミステリーとかだと集中して読むのですが、それ以外の本はなかなか読み進めることが苦手です。

この、東田直樹さんが書いた「自閉症の僕の七転び八起き」という本は、とても平易な言葉で、しかも余白が多く、決してボリュームも多いわけではないのに、何故かずいぶんと時間がかかってしまいました。

東田さんは、会話も思うようにできない重度の自閉症でありながら、パソコンや文字盤を使って援助なしでコミュニケーションが可能となり、今は作家になっています。
彼が13歳の時に書いたとされる「僕が跳びはねる理由」という本は、それまで理解されにくかった自閉症の方の内面が書かれていて希少な著作ということで、20ヶ国以上で翻訳されているそうです。

この「自閉症の僕の七転び八起き」は「僕が跳びはねる理由」(ブログ)を再編集し、加筆・修正したものなので、まさに自閉症である彼から見た世界や自身の気持ちが非常に伝わってくる本でした。

私は、大人になってからわかる(程度の軽度な)発達障害の方の検査やカウンセリングはしていますが、重度の自閉症の方とはあまり接したことがありません。
もちろん教科書的な知識はありましたが、この本を読んでかなり目からウロコが落ちることが多く驚きました。

「どうして話せないのか、僕はずっと不思議でした。小さい頃は訳がわからず、ただ悲しいだけでした」
という文章からは、自閉症の方がそんな風に思っていたという想像すらしていない自分に気づきました。

また、時々脈絡のない言葉を言ってしまうことについても、その時に頭の中で何が起きているのかを克明に記しています。
連想ゲームのように色々なことが頭に浮かんだ挙句に、自分としてその時にふさわしい言葉を言っているのだということも、よく理解ができました。

自閉症の方の特徴でもあるこだわりの強さについても、、本人はやめたくてもやめられず、自分を責めて苦しい思いをしていることも読み、ああ、そんな風に思っていたんだ・・と本当に目からウロコでした。

なんだ、私、ちっとも自閉症者のことがわかってないじゃないか

と自分を恥じました。

特に、この文章は、発達の問題を抱える子供を支援する援助職やご家族に是非読んでいただきたいと思いました。

「支援というと、みんなは何を手伝えばいいか、あるいはどんなふうに環境を整えればいいかと考えます。それも大切かもしれませんが、一番重要なことは、意欲を育てることだと思います。…略…何かに挑戦する権利というものも、認めてあげて欲しいのです。」

これは、普通学級が良いか特別支援学級(学校)が良いかというところで語っている言葉です。
自閉症の症状は人それぞれなので、当てはまる人とそうでない人がいるのかもしれません。
でも、これって、健常者にも当てはまる言葉ですよね。
ここでも、うーんと考えさせられてしまいました。

そんなこんなで、何だか読むのに時間がかかってしまったというわけなのでした。
興味を持った方は、是非彼の著書をお読みになってください。