感じる読書日記 その3(闘病記)

カウンセラーの竹田です。
「感じる読書日記」の対象になりそうな読書はしているのですが、ピンとくる本になかなか出会えていません。
そんななか、本を探している途中で出会った「闘病記」というジャンル。
今まで意識して選んで読んだ記憶がありませんが、今回読んでみたなかから、ご紹介します。

 

「再婚生活 わたしのうつ闘病日記」角川文庫 山本文緒著

直木賞作家の日常が、雑誌連載した「日記風エッセイ」として綴られています。
買い物、交友、仕事を縦糸に、うつ病による不眠や、体調不良、強い不安等を横糸に、
織りなす日々。読むほどにその日常に込められた著者の心情が伝わってきます。

当初「再婚とはどんな生活か」ということを書きたくて始めた連載、ということなのですが、再婚生活のあれこれは、普通の意味ではでてきません。
再婚相手である「王子」の存在も、うつ病と戦う生活においては、ある意味脇役でしかありません。この作品の「再婚生活」はうつ闘病そのものとなっています。

医師とのやりとりや薬のこと、カウンセリングや入院生活での患者同士の人間関係のことが大変興味深く、また著者の直面している落ち込みや疲労感や絶望…がひしひしと迫ってきて、読んでいても影響を受けて憂鬱になる気さえしました。

文庫化に伴い、長い前書きと後書きが書き足されています。本人によるこの「解説」で、闘病記の読み応えが増幅しています。

 

「ありがとう、わたし 乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで」 文藝春秋社  中元日芽香著

乃木坂46と言えば、紅白にもでるアイドルグループですが、私はそれ以上のことは知りません。
著者は、中学3年生から6年間、その乃木坂46でアイドル生活をおくり、その中で適応障害と診断され、芸能界を引退。
適応障害の時に受けたカウンセリングがきっかけになり、引退後養成スクールを経て、今は心理カウンセラーとして活動しています。

アイドルという特殊な世界での厳しさ、例えば、選抜メンバーとアンダーメンバーという明確な組分けや立ち位置での序列、定期的な入れ替え、歌や踊りや人気を客観的に評価されること、グループのメンバーとの関係が密接でありながら直接的なライバルでもあること…等、の中でメンタルに負担がかかっていったいきさつが書かれています。読んでいて、熾烈な競争にさらされていることに、ヒリヒリとしてきます。
とは言え、他の普通の生活を送っていても、直面することと共通点があるのでは、とも感じました。

他人から自分がどう見られているかを強く意識する辛さや、どんなに頑張っても自分を認められない苦しさを感じることは、希なことではないと思います。

知らない世界を垣間見ながら、そこにも普遍的な痛みがあることを知りました。

 

「乗るのが怖い」私のパニック障害克服法 幻冬舎新書 長嶋一茂著

TVのバラエティやニュース番組でコメンテーターとして見かける、元野球選手の長嶋一茂さんが、長い間パニック障害に苦しんでいたとは、全く知りませんでした。
まだ、現役選手だった時に発症したパニック障害について、10数年間の闘病の記録と、「一茂流」とも言える克服法が書かれています。
勝手な先入観で、生まれも育ちも恵まれて、強靱な体力をもち、そして精神的にもタフな方なのだろうとイメージしていましたが、新幹線や飛行機に怯え、お母様から「傲慢」と指摘され、キューピー人形に語りかけて救われる、意外で赤裸々な姿…。

この本では、発症から直面した様々な症状とその時々の芸能活動や私生活が語られています。そして、なんとか折り合いをつけて、「一茂流」の「孤独と飢えを味方につければ人生は変わる」という哲学にいきつきます。

「体験者ならではの目線を貫いた、リアルかつ実践的なパニック障害克服法」を目指した本書。読後、TVで見る一茂さんに対する好感度は個人的に上がりました。

 

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