ねこやしきのなぞ

こんにちは。カウンセラーの鶴田です。

以前、「うちの庭に入れ代わり立ち代わり来る複数の猫は、ご近所にお住いの“ねこばーさん”が、
来るものは拒まずの精神で、結果的に面倒をみている」というお話「ねこばーさんのはなし」を書いたのですが、
その“ねこばーさん”の家“ねこやしき”がどこなのかは、深く考えたことがありませんでした。

なんとなく、我が家の台所から見える、ナナメ隣南東の位置にある家がそうなのかな、と
思っていましたが、ご近所といっても、この辺の町内会の班は道路沿いの並びであるため、
斜め隣とかにある家のことは、実はよくわからないのです。

『猫たちもあっちの方角から来るし、きっとナナメ隣のOさんちが“ねこやしき”に違いない。
Oさんち手前のSさんは猫嫌いだし、Oさんち奥のHさんは、犬やら鶏やら飼っているっぽいから
野良猫地域猫が出入りするにはちょっと厳しいだろう』

そう考えて勝手に納得していたのですが、そのせいか、なんとなく“ねこやしき”として
意識するようになってしまい、猫たちが庭に来ない日は、もしかして“ねこやしき”から
出してもらえないのかな、とか、つい考えてしまいます。

ちょっと前にも、猫たちが何日も現れない日があって、気になって“ねこやしき”の方を台所の窓から
チラチラうかがっていたのですが、夜になって暗くなったのに、灯りも点かず、
人のいる気配がないことに気付きました。

このあたりの住宅地は、開発から50年くらい経っていて、当の昔に子育てを終えた
年配のご夫婦が二人暮らし、というケースが非常に多く、住民の高齢化が進んでいます。
そういえばOさん宅の裏で、ご主人とおぼしき高齢の方が、見回るようにゆっくりと
歩いているのをよく見かけました。

『もし万が一、ご夫婦のどちらかが入院とかして、一時的に留守にしている、とか、
そんな状況だったら、猫たちはどうなってしまうのだろうか?』

猫が見られないため、禁断症状が出たのか、ちょっと極端な妄想までしてしまったのですが、
はた、と気づきました。

『あれ? 僕、ご近所の人間より猫の心配してないか?』

この時ばかりは、自分の薄情さに驚いて、流石にショックを隠せませんでした。

以前、“仔猫>アスパラ>猫”、という当家の庭のオキテを書きましたが、ここに新たに
“仔猫>アスパラ>猫>にんげん”、というルールが追加されたのです。ヒドイ。

しかし、そんな心配やら妄言とは関係なく、数日経ったら、“ねこやしき”に
灯りがともるようになり、気のせいかもしれませんが、それにあわせて猫たちも
元気な姿を見せるようになりました。

猫たちと“ねこばーさん”の無事を喜んだのはもちろんですが、その時から
猫たちの行く末に、一抹の不安も感じるようになりました。

そんなある日、「土地境界立会いについてのお願い」という郵便物が届き、
Oさん宅が、解体されることを知ったのです。

(続きは12月下旬予定です)