建物と人と

こんにちは。カウンセラーの内藤です。

ご近所に住むベテランの大工さんから「ちょっと寄っていきませんか」と、時折お声がけをいただきます。

お宅で(コロナ禍前は、お酒を一緒にいただきながら)、色々なお話をうかがうのですが、多くは修行や道具・材料も含め、大工仕事の話です。

特に、その方が大切にされている宮大工さん的な日本の古い匠の技の話が楽しみです。

素人で建築のことは何もわからない私ですが、西岡常一*1さんの本は興味深く読み、今も捨てられずに本棚にあります。文字でも面白いのに、生の言葉で古くからの技術について聞ける機会は貴重なひとときに感じます。

ある日は、今の木材とかつての木材の違いについて。
「いまの木材は肥料を与えて作っているからか、年輪と年輪の間が広い。昔の木は年輪の間がもっと狭かった」とのこと。
もともと、四季の湿度や気温の変化により、年輪と年輪の間は、厚くなったり狭くなったりする性質がありますが、年輪の間の広い木は、間の狭い木より歪みが大きくなるのだそうです。

また、かつては木材を丸太で数年ねかせておき、切り出した後もさらに数年ねかせた上で歪みがあればそれを整えて使ったけれど、今は寝かさず乾燥機で一気に乾燥させたりする為、出荷された時には整って見えるけれども、その後のそりや歪みは大きくなるとか。

別の日には、どんな木材をどこで使うかについて。
「芯のある木は曲がったり歪んだり、癖がある。でも、強いから、「ねだ」など大事なところには、芯のある木を使うと強度が違う」
「綺麗に揃った柾目の木、暴れにくい芯去り(芯を外した芯以外の場所を使った木材)は、目に見えるところの柱に使われている(国産の太い木が少なくなったので芯去りの良質の木材はとても高価)」

癖や強度や美しさなど、それぞれの木材の性質を見極めて上手に組み合わせ、建てた後の素材の動きや歪みを予め読み込んで建てていく技と、それが近年中々難しい事情など、お話は多岐に及びました。

色々な木材を、適材適所で使う話は、西岡さんの本に書かれている事に通じます。

建物(在来工法の木造建築)をもたせるために大事な事は「よく風を通すこと」という話もありました。

うかがっていると、木で建てた家と、人やひとの集まりには、共通する部分も幾らかあるやに思われました。

素材の育成を急ぎ、形ばかり均一に整え出荷する弊害。
表面が整って見えても、生きている素材はそれぞれの個性や癖があり、動くこと。
多様な質の木材を適材適所で組み合わせることで互いを活かしあって長持ちする建物を建てる技術や工夫の大切さ(一方、素材と組み合わせを間違うと、建物に大きな歪みが出ること)。
建物を閉め切らず、風通しをよくすることでもちがよくなること。

悠長な事ばかりも言っていられない変化の時代に、中々折り合いの難しい話ですが…。

*西岡常一:法隆寺専属の宮大工で、法隆寺、薬師寺等の解体修理や再建を手がける。飛鳥時代から受け継がれていた寺院建築の技術を後世に伝え「最後の宮大工」と称された。著書に『木のいのち木のこころ』天・地・人(共著・小川三夫、塩野米松)(草思社)等。

 

東京都 港区麻布十番駅近くのカウンセリングルーム気分向上委員会