「彼女は頭が悪いから」~人をモノとして見る

カウンセラーの北野です。東京は梅雨が明けましたが、そんな中
ジリジリ暑く、なにか湿気がまとわりつくような本を読みました。

2019年に上野千鶴子教授が東大入学祝辞で取り上げて話題になった、姫野カオルコさんの「彼女は頭が悪いから」。
東大生5人が1人の女子大学生にわいせつな行為をしたとして、2016年に逮捕された事件を基にした小説です。

もともと、姫野カオルコさんは大好きで、既に何冊も読んでいます。
若い頃は官能小説を書いていてその手の小説もあれば、シュールでブラックなユーモアが満載のふざけた本も書いている作家で、あまりメジャーではない印象だったのですが、
直木賞を取った時には、ああ世の中からも評価されたか~と嬉しくなったものでした。

さて、小説のモチーフとなった当時の事件をググってみると、事件そのものについては、ほぼノンフィクションであり、「彼女は頭が悪いから」というのも、実際に加害者の東大生の一人が公判で言った言葉とのこと。
とはいえ、小説の前半はそれぞれの登場人物の家族歴や関係など、まさに「生育歴」とも言えるものをフィクションで書いています。

知的であるはずの東大生5人が1人の女子大生を全裸にし、笑いながら叩き、熱いカップ麺を身体に落とし、胸の悪くなるような壮絶な行為をしたのは何故なのか。
そして何故それだけのことをしても、「レイプじゃないのに何が悪いの?」と信じて疑わないのは何故なのか。

とても理解に苦しむけれども、姫野カオルコさんなりに彼らの人物像を描いてくれています。

そして、女子大生の方も、「東大生狙いの勘違い女」当時SNSでもかなりのバッシングを受けたようですが、
本当はどうだったのか?もちろんフィクションではあるけれど、それなりの解釈を与えてくれる本になっていると思います。

奇しくも、最近、東京オリンピックの開会式の作曲を担当している小山田圭吾という人が、昔の障害者に対するいじめを、笑いながら話したという記事を目にしました。
この方の発言も不快極まりないものでしたが、27歳の時の発言らしく、人をモノとして見る人というのは変わらないものなのかもしれないと暗澹たる気持ちになりました。
(謝罪文は拝見しました。今回の騒動より前に内省されていることを祈ります。)

あまりに思うことが多過ぎて、とりとめなくなってしまいましたが、
「彼女は頭が悪いから」姫野カオルコ著
皆さんも良かったら一度読んでみてはいかがでしょうか?
後味の悪さは保証しますが(笑)

※ブログアップ時は小山田圭吾さんの発言を45歳の時だと勘違いをして書いてしまいましたので、少し修正しました。