精神科の薬の話

今月の頭に開催されたシンポジウムが私にとって、なかなかに衝撃的だったので、少し皆さんにもお伝えしたいと思います。

「精神科の薬について知っておいてほしいこと」の著者であるジョアンナ・モンクリフ(精神科医)がゲストスピーカー。
そして、依存症で有名な松本俊彦精神科医を始め、現役の精神科医と統合失調症患者の方々が、精神科の薬について感じていることを話してくださいました。

対面とオンラインでおそらく総勢1000名以上は聴講していたと思います。
はっきりとはわかりませんが、質疑の様子からは、精神科医、精神疾患に関わる援助職、そして当事者とその家族が多く参加していたように感じました。
モンクリフ先生の著書を私はまだ読んでいないのと、精神科医でもないので薬についての理解には限界がありますが、話の内容としては、精神医学の世界では薬物療法に疑問を持たない状況があるが、別の見方もするべきではないか、という提言でした。

私の理解を深めるためにも、ここでいくつか記憶に残っていることをアウトプットさせていただくと・・・

まず、薬は、「脳の異常な状態を正常に戻す」(疾病中心モデル)と言われているが、実は、向精神薬は「脳が変容した状態を作り出し」「有用な効果は薬の機能にる脳の変化がそれまでの症状に上書きされている」(薬物作用モデル)とのこと。
例えば、抗うつ剤を処方されると、その作用により感情鈍麻や無気力といった症状が生まれ、それが抑うつ感情に上書きされて抑うつ感が減少したという効果として現れる、ということなのです。作用としては、アルコールや麻薬と一緒と言われ、驚きましたが、妙に納得しました。

そして、薬に効果があるとされるエビデンスとして、必ずプラセボ群(薬でない物を薬だと言って飲ませて効果をみる)と差があるとしている方法についても、懐疑的な見解をしていて、なるほどなーと思わされました。
ちなみに、私もクリニック勤務時代に製薬会社のMRさんから新薬の説明を何度か受けましたが、説明書に書かれたプラセボ群との差は、素人目からすると驚くほど小さいものでした。(例えば薬の効果があったとされる群が60%とすると、プラセボでも40%程度が効果がある、みたいな)

シンポジウムで声をあげてくれていた統合失調症の患者さんも、入院して多くの薬を処方されたことで、行動は落ち着いたがどんどん何もできない人間になっていった、と話していました。
その方は、良い医師に巡り合って減薬していったことで、現在では生き生きと仕事をしているとのことです。

また、現役精神科医からは、製薬会社と病院の関係、エビデンスはお金が生まれるところにしか作られない、今まで妄信的に多剤投与をしており、それに異議を唱える雰囲気は病院にはなかったといった話も聞かれました。

シンポジウムとしては、決して薬を否定するということではなく、皆(特に精神科医)がしっかり疑問を持とうよ、というメッセージなのかなと受け取りました。
患者側としても、何故その薬を医師が処方するのか、最初に治療方針をしっかり聞くことも大切なことと感じました。(北野)