昔の記憶による過小評価

カウンセラーの北野です。

俺は誰だあっ!

という、自分の素性やアイデンティティーがテーマの、「天日坊」という歌舞伎を先日観に行きました。

歌舞伎、と言っても、歌舞伎座とか演舞場ではなく、渋谷・コクーン歌舞伎です。
コクーン歌舞伎は、いわゆる歌舞伎が本業でない人達で作られる新しい芝居で、今は亡き勘三郎さんが始めました。
舞台上で大量の水をバシャバシャ使ったり、舞台の裏を開けて、外をも舞台に取り込んで演出したり、といつも目からウロコで楽しませてくれる歌舞伎です。

今回の「天日坊」は、「あまちゃん」でお馴染みのクドカンこと宮藤官九郎さんの脚本、串田一美さん演出、中村勘九郎、七之助、獅童といった人気役者たちが演じています。

実は、この「天日坊」、10年前に一度大体同じメンバーで初演をしており、私も観に行っています。

ただ、10年前は、正直言って、「なんかつまらないな。やっぱり勘三郎とは全然違う。若手も頑張っているけどねえ。」と、とてもがっかりしてしまったのでした。
とはいえ、その時は、何がそんなに面白くなかったのか、はっきり自覚をしていなかったと思います。
なので、今回も、観に行くつもりはなかったのですが、回り回って、私のところにチケットが舞い込み、渋々行ってみました。

お話は、源頼朝や木曽義仲の時代。
歴史物は、あまりストーリーが頭に入らない性質なのですが、今回は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」と同じ時代ということもあってか、なんだかすんなり頭に入ってきました。
ちなみに、「鎌倉殿・・」は、大変楽しく観ています。

そして、前作では感じなかった、感動が今回はありました。
主人公の天日坊が、自分が何者かがわからず、何をしたいかわからず、周りに流され闘う戸惑いや悲しみが、痛いほど伝わってきたのです。

そこで、ああ、と思い当たりました。

勘三郎さんであれば、間違いなく感じるであろう「思い」みたいなものが、前回はあまり感じなかったことに。
その頃、勘三郎さんは病気と闘っている最中。
初めてのコクーン歌舞伎で、勘九郎さん達も余裕がなかったのかもしれません。
何となく、決められた形をなぞっているだけ、という感じが拭えませんでした。

そして、10年経って、彼らは素晴らしい舞台を見せてくれました。
ああ、人って成長するんだな。そりゃそうだよな。
と、改めて思いました。

もちろん、これは私個人の感想です。
前回一緒に観た家人は、コクーン歌舞伎の中で一番面白かったと言っているくらいですから。

今回、代打で観に行って本当に良かったと思っています。
そして、こういうことって、結構仕事とかでもあるよなあ、と考えました。

新人の時に一緒に仕事をした人は、何年経っても未熟者に感じてしまったり、
一度失敗した人は、ずーっとダメな人って思ってみたり・・・

過去の記憶を引きずって物事を判断するのはやめよう、と思えた一件でした。
だって、勿体ないですもの。

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