認知行動療法

私たちは何か困った心の問題が起きて不安に感じたりストレスを感じたりするときに、ついつい悲観的に考えがちです。
認知行動療法はそうした時に本来皆さんが持っている心の強さを取り戻し、問題の受け止めかたや考え方(これを“認知”といいます)に働きかけて心のバランスを取り戻して心を軽くしていく心理療法です。
厚生労働省により、うつ病や不安症に効果があると科学的に実証されたとされる、唯一の心理療法でもあります。

元気な時はある状況に対して適切に判断し対応していけるものですが強いストレスやうつ状態にあると誰でもものごとに対する考え方や感じ方に偏りが出てしまいます。これを“認知の偏り”といいます。(認知の歪みともいいます)

例えば、根拠が全く不十分なのに自分が気になることにだけ注目して「そうに決まっている」と、決めつけてしまうようなことがあります。仕事で失敗をすると「自分はいつも失敗する」と決めつけがちになることがありますが、「いつも」とか「絶対に」などと思うのはこの“認知の偏り”の可能性が高いと思っていいでしょう。
このほかにも認知の偏りはいくつかのパターンがありますからあとで細かく見てみましょう。

この認知の偏りに気づいて修正するためには、認知について“自動思考”と“スキーマ”と呼ばれている2つのレベルに分けて考えてみるとわかりやすいでしょう。
“自動思考”とは何かが起きた時に瞬間的に思いつく思考やイメージのことです。例えば職場でメールを送ったのにすぐに返事が来ない場合、「自分は嫌われている」と反射的に思ってしまうようなことを指します。
“スキーマ”とはその人がずっと持っている自動思考のもととなるような人間観や人生観です。

認知行動療法では日常生活の中でのトレーニングを通じて自分自身の自動思考に気づき、偏りのない認知へと修正していきます。また、再発を予防するためにもスキーマにも目を向けて、自分を縛っているルールや思い込みを解放し、より楽に生きられるようお手伝いをしていきます。

“認知の偏り”の10のパターン

(1) 思い込み、決めつけ:根拠が不十分なのに自分の考えが正しいと思うこと
(2) 白黒思考:あいまいな状態のままでいられずものごとを白か黒かはっきり決めたいという考え
(3) “べき”思考:自分に対しても他者に対しても「こうすべきだ」と高い要求水準を求め「もっとこうすればよかった」などと思い悩むこと
(4) 結論の飛躍:少しの失敗で、人生が終わった等とオーバーな結論を導き出してしまうこと
(5) 過度の一般化:一度起きた否定的なことで、全てがダメだと思い込むこと
(6) 自己関連付け:良くないことが起こるとなんでも自分のせいだと思い込むこと
(7) 深読み:相手の考えを確認することなく、そうに違いないと勝手に思い込むこと
(8) 過大視と過少評価:自分が起こした失敗など都合の悪いことは大きく、成功した良いことは過少に評価してしまうこと
(9) マイナス思考:よいこともたくさんあるのにちょっとしたネガティブなことにばかり目が行ってしまうこと
(10) ラベリング(レッテル貼り):何か失敗すると、自分や他人に対してネガティブなレッテルを貼ってしまうこと